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長崎県のイベント・祭り

見る 長崎県美術館 スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた

2023年4月8日(土)~6月11日(日)
長崎県/長崎市/長崎県美術館 企画展示室

ラモン・カザス《「アニス・デル・モノ」のポスター》

ラモン・カザス《「アニス・デル・モノ」のポスター》1898年、
カラー・リトグラフ、国立西洋美術館

国立西洋美術館企画、200点以上のスペインにまつわる版画作品が一堂に会する九州初の展覧会

「スペイン」という国についてみなさんはどのようなイメージを抱くでしょうか。

異国情緒、豊饒な芸術文化、歴史的建造物の数々...。そのイメージはどのように形成されたのでしょうか。

実は「版画」がそのために大きな役割を担っていたのです。

本展では、スペインに関わる版画制作の史的展開を、17世紀初頭から20世紀後半までの長大な時間軸で概観します。

写し伝えることのできる「版画」が、美術メディアとしてスペインに関するイメージの形成や流布にどのように貢献したか、200点を超える作品から探るこれまでにない企画です。

また、本展の出品作は、国立西洋美術館と長崎県美術館所蔵のスペイン美術コレクションを中心に、すべて国内で所蔵されている作品です。

今日までの日本におけるスペイン美術の受容と、それに付随した豊かなコレクション形成の様相も浮き彫りになることでしょう。

制作技術の発展に伴って表現の多様性と多義性を深め続けてきた版画芸術の精髄をご覧ください。

*会期中、一部作品の展示替えがあります。
前期:4月8日(土)~5月7日(日)後期:5月9日(火)~6月11日(日)

 

ギュスターヴ・ドレ原画、エリオドール・ピサン版刻「彼の頭は本のなかで読んだもろもろのことからなる幻想でいっぱいになってしまった」『ドン・キホーテ』(第1巻)、1863年刊、木口木版、国立西洋美術館研究資料センター

1章 伝統への照射

18世紀以後、スペインにおいても自国の歴史や過去の再評価が始まり、文学においてはセルバンテスの『ドン・キホーテ』が、絵画においてはベラスケスの作品が、古典としての地位を確立します。

これら黄金世紀の二つの金字塔に対し、後世各国の芸術家たちがどのように挑み、どのように表現していったのか。

最初に『ドン・キホーテ』の挿絵の伝統について、次いでベラスケスに基づきゴヤとマネが制作した版画を紹介します。

ギュスターヴ・クールベ《もの思うジプシー女》

ギュスターヴ・クールベ《もの思うジプシー女》1869年、油彩/カンヴァス、国立西洋美術館 松方コレクション

2章 スペインの「発見」

ロマン主義の流行下、フランスやイギリスからスペインを訪れる旅行客が急増し、スペインの文化文物、風景が盛んに紹介され、エキゾチックな異国としてのイメージが定着していきました。

ここでは、19世紀初めの挿絵入り旅行記に始まり、同世紀の外国人がスペインのどのような側面に惹かれ、造形化していったのかを、版画に加えポスターや写真、新聞挿絵など様々な資料を交えて紹介します。

フランシスコ・デ・ゴヤ《マドリード闘牛場でフアニート・アピニャーニが見せた敏捷さと大胆さ》

フランシスコ・デ・ゴヤ《マドリード闘牛場でフアニート・アピニャーニが見せた敏捷さと大胆さ》『闘牛技』第20番 1816年、エッチング、アクアティント、長崎県美術館

3章 闘牛、生と死の祭典

スペインの闘牛は18世紀後半に近代的な形態や理論が確立され、生と死が隣り合わせにある緊張とドラマから、賛否両論を巻き起こしながらも長きにわたって大衆の耳目を集めてきました。

ここではゴヤとピカソ、アントニオ・サウラによる闘牛主題の作例を中心に紹介します。

ラモン・ピチョット《2人の少女》

ラモン・ピチョット《2人の少女》1906年頃、
エッチング、アクアティント、プぺ法による着彩、国立西洋美術館

4章 19世紀カタルーニャにおける革新

カタルーニャ生まれのマリアーノ・フォルトゥーニは、19世紀半ばの欧米で絶大な人気を誇った画家で、スペイン版画史においてはゴヤの影響を脱し、フランスの動向に触れながら優れた作品を制作しました。

ここではまず彼の版画の仕事に焦点を当てます。

また、19世紀末になると、産業化の進んだバルセロナを中心とするカタルーニャでは、パリのアール・ヌーヴォーや世紀末美術を手本としながら、ブルジョワ層のための新たな芸術が勃興、芸術カフェ「四匹の猫」のような場所が登場しました。

本章後半では、若きピカソを中心にバルセロナに集い、更なる活躍の場を求めパリに旅立った芸術家たちの作品を紹介します。

ホセ・グティエレス・ソラーナ《腕を組んで踊る仮面たち》

ホセ・グティエレス・ソラーナ《腕を組んで踊る仮面たち》1932-33年頃(1943年以前)、エッチング、長崎県美術館

5章 ゴヤを超えて:スペイン20世紀美術の水脈を探る

20世紀のスペインはピカソ、ミロ、ダリ、タピエスなど美術史に輝く巨匠を幾人も輩出しました。

本展では、こうした美術家たちがどのようにして自国の伝統と向き合い、それを自らの制作に取り込み超克していったのか、ゴヤを出発点とした2つの具体的な観点から検証します。

第一は「エスパーニャ・ネグラ」と呼ばれるもので、20世紀初頭に盛んとなった国家的・民族的なアイデンティティを模索する思潮下、近代化に立ち遅れたスペインの姿が再度注目を浴びた過程を紹介します。

ここではバローハやソラーナらの作品が、彼らにとって大きな着想源となったゴヤの版画などと共に並びます。

次いで「叫びと抵抗:20世紀スペインにおける政治と美術」と題し、内戦(1936-39)とフランコ独裁(1936-75)という政治的困難の中、芸術家たちがどのように民衆に寄り添い、彼らを鼓舞し自由を求めていったのかを辿ります。

6章 日本とスペイン

展覧会の締めくくりには、戦後の日本人がどのようにして同時代のスペイン美術に親しんでいったのか、その受容過程を版画作品を通じて振り返ります。

日本の芸術家との交流から生まれたものや、日本での展覧会などで紹介されたもの、国内で最初に収蔵された作品、また日本でその作家が知られる端緒を築いた作品などを中心に紹介します。

フランシスコ・デ・ゴヤ《バルタサール・カルロス王太子騎馬像(ベラスケスに基づく)》

フランシスコ・デ・ゴヤ《バルタサール・カルロス王太子騎馬像(ベラスケスに基づく)》1778年、エッチング、ドライポイント、国立西洋美術館

=関連企画=

特別講演「スペインに行ってしまったら、これからどうやってスペインについて話しをするつもりなんだい:スペインのイメージの形成の歴史」
【日時】 4月8日(土)14:00~15:30(13:30開場)
【会場】 ホール
【講師】 川瀬佑介氏(本展監修者、国立西洋美術館主任研究員)
【定員】 先着100名 *当日受付
【料金】 無料 *要本展観覧券

担当学芸員によるギャラリートーク
【日時】 4月23日(日)、5月28日(日) 各日11:00~12:00
【会場】 企画展示室
【対象】 中学生以上
【定員】 各回先着20名 *当日受付
【料金】 無料 *要本展観覧券
*各回開始10分前に企画展示室入口前へお越しください。

こども鑑賞会「『ドン・キホーテ』の世界に旅立とう!」
本展には、スペインの物語『ドン・キホーテ』のいろいろな場面をあらわした作品がたくさん出品されます。お話をよく知らなくても大丈夫。当館エデュケーターと一緒に、作品から物語の世界を感じる旅に出ましょう。
【日時】 ①4月22日(土)、②5月27日(土)
     各日13:30~14:30
【会場】 アトリエ、企画展示室
【対象】 小学生
【定員】 各回15名 *事前申込制、抽選制
【料金】 無料
【参加申込〆切】 ①2023年4月9日(日)、②2023年5月14日(日)
参加申込は・・長崎県美術館Webサイト

2日間連続ワークショップ「ウォーターレスリトグラフの作品づくり」
本展出品の版画作品に多く用いられている「平版技法」の一種、「ウォーターレスリトグラフ」による作品づくりを行います。
技法の仕組みについてのレクチャーに始まり、描画・版づくり・刷りまで一連の工程を2日間かけてじっくり取り組みます。
【日時】 5月13日(土)・14日(日) 各日10:30~13:00
【会場】 アトリエ
【講師】 今泉奏 氏(版画工房kawalabo!スタッフ)
【対象】 中学生以上(両日とも参加できる方)
【定員】 15名 *事前申込制、抽選制
【料金】 1,000円 *要本展観覧券
【参加申込〆切】 2023年4月23日(日)
参加申込は・・長崎県美術館Webサイト

【開館時間】 10:00~20:00 *最終入場は19:30
【休館日】  4月10日(月)・24日(月)、5月8日(月)・22日(月)
【観覧料】  一般1,200(1,000)円、大学生・70歳以上1,000(800)円、高校生以下無料
*( )内は前売りおよび15名以上の団体料金
*前売券の販売は4月7日(金)まで
*会期中、本展観覧券でコレクション展にも入場できます。

問合せ先:長崎県美術館 TEL 095-833-2110

詳細は・・長崎県美術館Webサイト

 
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*料金、時間、休館日等は、変更の場合があります。必ず確認の上、お出かけください。
*複写・転写を禁じます。

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