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長崎県のイベント・祭り

見る 長崎県美術館 没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く

2025年11月22日(土)~2026年2月1日(日)
長崎県/長崎市/長崎県美術館 常設展示室第1・2室

鴨居玲《私の村の酔っぱらい》

鴨居玲《私の村の酔っぱらい》1973年 ひろしま美術館蔵

孤独、不安、死の恐怖
人間が持つ暗い影と向き合い続けた画家・鴨居玲の回顧展

本展は、戦後の日本洋画壇において異色の存在感を放った画家・鴨居玲の大規模回顧展です。

鴨居玲は1928年に石川県金沢市に生まれましたが、本籍は父親の生まれ故郷である長崎県北松浦郡田平町(現・平戸市田平町)でした。

そのため長崎県美術館では長崎ゆかりの作家として開館当初より顕彰を重ねてきました。

長崎県美術館での回顧展開催は、2006年以来19年振りとなります。

卓越したデッサン力、そして光と影が織りなす画面構成によって描かれたシリーズは、「自画像」「酔っぱらい」「女性像」「教会」など多岐に渡ります。

特に1971年からのスペイン時代に描かれた老人や物乞い、そして酔っぱらいの作品群は、鴨居芸術の白眉といえるでしょう。

本展は、笠間日動美術館、ひろしま美術館、石川県立美術館、そして長崎県美術館の作品を中心に、画業初期から絶筆に至るまでの油彩画やデッサンによって構成されます。

孤独や不安、死の恐怖など、人間誰しもが持つ暗い影に正面から向き合った鴨居の作品は、混沌を極める現在だからこそ、これからを生きる我々に大きな示唆を与えてくれるでしょう。

鴨居玲《サイコロ》

鴨居玲《サイコロ》1969年頃 長崎県美術館蔵

展示構成1.モティーフの模索と選択

鴨居は 1968年制作の《静止した刻》(東京国立近代美術館蔵)により、翌年の第2回安井賞を受賞しました。すでに40歳を超えた比較的遅い画壇での本格的デビューといえるでしょう。この作品を機に、賭け事をする男たちの群像が繰り返し描かれ、その劇的ともいえる緊張感が主題となっていきます。今回展示している《サイコロ》は、その一連の作品といえるでしょう。
この章では、鴨居初期の到達点であるこれらの群像表現にるまでの軌跡を紹介します。

鴨居玲《蛾》

鴨居玲《蛾》1969年 長崎県美術館蔵

展示構成2.自画像

鴨居は「自画像の画家」と呼ばれるほど、画業初期より数多くの自画像を描いてきました。1969年に制作された《蛾》はその代表例です。そしてこの頃から目を暗く塗りつぶし、口をだらしなく開けた人物が描かれるようになります。どこか呆けたようなこの姿からは、意志のなさ、さらには生の放棄さえ感じられるでしょう。人物たちに死の影が宿るようになるのはこの頃からです。
特に最晩年は、自嘲気味ともとらえることのできる自画像がいくつも描かれました。

鴨居玲《私の村の酔っぱらい(A)》

鴨居玲《私の村の酔っぱらい(A)》1973年 笠間日動美術館蔵

展示構成3.私の村の酔っぱらい

鴨居は 1971年にスペインのラ・マンチャ地方の町バルデペーニャスに居を構え、村人たちと生活を共にしながら、彼らをモティーフに制作のピークを迎えます。酔っ払いや踊り狂う人々、老人、さらには傷痍軍人に至るまで、貧しくも逞しく生きる村人たちに鴨居は魅了され、憑かれたように制作に没頭しました。
人生の哀しみと刹那的な生の喜びを感じさせるこれらの作品群は、鴨居芸術の頂点といえるでしょう。

鴨居玲《白い人》

鴨居玲《白い人》1980年 ひろしま美術館蔵

展示構成4.女性像

鴨居はヨーロッパからの帰国後、神戸にアトリエを構えます。
そこから亡くなるまでの8年間は鴨居にとって苦悩の日々でした。描くテーマを求めてたどり着いたのが女性像でした。それまでは人間の深い内面を抉り出すような絵画世界を展開してきましたが、これらの女性像では人間味のないどこか神々しい姿で表現されています。
新たな境地を開拓したように見えましたが、本人は「裸婦が描けない」と周囲にもらすほど苦悶し続けました。

鴨居玲《教会》

鴨居玲《教会》1978年 石川県立美術館蔵

展示構成5.教会

鴨居が手がけた人間以外の唯一の主題が「教会」でした。特に、カトリック教国のスペインやフランスでの滞在中は繰り返し描かれました。
教会を描いた理由として、「何故自分が無宗教であるか、という問いかけ、それが最初です」と語っています。鴨居の描く教会には入口や窓がなく閉ざされており、まるで外の者を拒んでいるかのようです。そしてだんだんと宙に浮き、さらに手の届かない存在へとなっていきます。
鴨居が敬愛した下着デザイナーの姉・羊子は、若い頃に洗礼を受け熱心な信者でした。姉とは対照的に、どこにもすがることのできない鴨居自身の孤独が「教会」シリーズには現れ出ているといえるでしょう。

《「弥縫録 中国名言集」掣肘》挿絵

《「弥縫録 中国名言集」掣肘》挿絵 1978-80年 個人蔵

展示構成6.弥縫録(びほうろく)

中国歴史小説で知られる 陳舜臣(ちんしゅんしん1924-2015)の連載エッセイ『弥縫録 中国名言集』(『週刊読売』1978年4 月16日号~1980年5月25号)のために、鴨居は挿絵を手がけています。
コミカルに描かれたこれらの挿絵からは、ユーモアあふれる鴨居の別の側面を見出すことができます。

=関連企画=
レクチャー「鴨居玲の作品を語る」
【日時】 2026年1月11日(日) 14:00~15:00(開場13:30)
【会場】 ホール
【講師】 森園敦(長崎県美術館 学芸員)
【定員】 先着80名
【料金】 無料
学芸員によるギャラリートーク
【日時】 2025年11月29日(土)・12月27日(土)、2026年1月24日(土) 各日14:00~15:00
【会場】 企画展示室
【定員】 各回先着20名
【料金】 無料 *要本展覧観券
ワークショップ「鴨居玲と出会う/油絵に触れる」
油絵にはじめて触れる方向けのプログラムです。
油絵の道具や使い方を知り、鴨居玲の作品を鑑賞した後に、講師の指導のもと「自分の顔またはその一部」を描くことに挑戦します。
【日時】 12月20日(土)10:00~15:00、12月21日(日)10:00~15:00
【会場】 アトリエ、企画展示室
【講師】 辻本健輝氏(画家・STUDIO HIZEN LLC 代表)
【対象】 中学生以上
【定員】 各回10名 *応募者多数の場合は抽選
【料金】 1,000円 *大学生以上は要本展観覧券
【申込方法】 専用申込フォームからお申込みください。
【参加申込締切】 2025年11月30日(日)

【開館時間】 10:00~20:00(1月2日・3日は18:00まで) *最終入場は閉館の30分前まで
【休館日】  11月25日(火)、12月8日(月)・22日(月)・29日(月)~2026年1月1日(元日)、1月13日(火)・26日(月)
【観覧料】  一般1,300(1,100)円、大学生・70歳以上1,100(900)円、高校生以下無料
*( )内は前売りおよび15名以上の団体料金
*会期中本展観覧券でコレクション展にも入場できます。

問合せ先:長崎県美術館 TEL 095-833-2110

詳細は・・長崎県美術館Webサイト

 
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*料金、時間、休館日等は、変更の場合があります。必ず確認の上、お出かけください。
*各地のお祭りには、現代に引き継がれている伝統的な神事や儀式として執り行われているものが数多くあります。現地の係員の指示に従って、マナーを守って見学してください。
*複写・転写を禁じます。

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