飛永頼節《レクイエム 20》 2009年 アクリル・ カンヴァス 個人蔵
芸術家たちが描いた作品を通して、被爆80年を迎える長崎から問いかける
2025年は長崎県美術館開館20周年という記念すべき年であるとともに、長崎にとって被爆80年という節目の年です。
長崎県美術館は、被爆地・長崎に在る美術館として、このたび戦争をテーマとした展覧会を開催します。
人類の歴史は戦争の歴史といっても過言ではないでしょう。
古今東西、戦争は途絶えることなく繰り返されてきました。
今もなお、世界では凄惨な戦争が続いています。
共通するのは、権力者たちによる強硬な姿勢の影で、子どもたちを含む多くの民衆が犠牲となっていることです。
こうした切実な現状を受け、長崎県美術館では、原爆のみならずむしろそれを引き起こした戦争に焦点を当てます。
そしてスペイン美術を標榜する美術館として、収蔵作品であるフランシスコ・デ・ゴヤの版画集〈戦争の惨禍〉を中心に据え、そこから抽出されるテーマに沿って展覧会を構成します。
〈戦争の惨禍〉において、ゴヤの最大の関心は特定の事件を描くことよりもむしろ、それらを通じて露わとなる人間の暴力性、残忍性、絶望や狂気など、戦争が持つ普遍の性質へと向かいました。
そしてなによりも、戦争の真の犠牲者である名もなき民衆たちの死が赤裸々に描かれていることがこの版画集の最大の特徴といえるでしょう。
〈戦争の惨禍〉の世界観は、戦争という負の連鎖を断ち切ることのできない現在だからこそ存在感を示すのです。
本展では、ゴヤの〈戦争の惨禍〉全点とともに、他の芸術家たちが戦争をどのように視覚化してきたかを、約180点の作品によって考察します。
青木野枝《ふりそそぐもの/朝香宮邸 II》 2024年 鉄、ガラス 作家蔵
特別出品
パブロ・ピカソ《ゲルニカ》の原寸大複製陶板
本展会期中、パブロ・ピカソ《ゲルニカ》の原寸大複製陶板を当館エントランスロビーに特別展示します。
《ゲルニカ》とは・・・
ピカソが、スペイン内戦中の1937年、パリ万国博覧会のスペイン館の壁画を依頼されて制作した作品です。
当初は政治的なスローガンとはかけ離れた主題の絵画を描く予定でしたが、同年4月26日にバスク地方の都市ゲルニカが反乱軍のフランコ将軍を支援するドイツ空軍によって空爆されたのをきっかけに、この無差別爆撃を激しく糾弾する絵画を驚くほどの短期間で仕上げました。
《ゲルニカ》は、ピカソの最高傑作であるのみならず、「戦争の世紀」といわれた20世紀を象徴する絵画であるといえます。
このたび本展の特別出品としてエントランスロビーに展示される原寸大の複製陶板は、1997年に大塚オーミ陶業株式会社によって製作されました。
同年7月に、完成した複製陶板を確認するために来日したピカソの息子クロード・ピカソが「今まで製作した複製の中でも最高の出来」と高く評価したように、本作はその完成度の高さから、原作が持つ絵画的な迫力、そしてそれが放つメッセージを十分に想像させるものです。
=関連企画=
◆記念シンポジウム
スペイン国立プラド美術館学芸員と日本国内のスペイン美術史研究を牽引する専門家各氏をお招きし、本展の内容をさらに広く深くお伝えするシンポジウムを開催します。
【日時】 7月19日(土) 13:30~17:30(途中休憩、西日通訳あり)
【発表者】 グートルン・マウラー氏(プラド美術館学芸員)
大髙保二郎氏(早稲田大学名誉教授)
木下亮氏(昭和女子大学特任教授)
松田健児氏(慶應義塾大学教授)
長崎県美術館 学芸員
【会場】 長崎県美術館 ホール
【定員】 先着80名
【料金】 無料
【共催】 スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会
【助成】 (公財)鹿島美術財団
◆学芸員によるギャラリートーク
【日時】 7月26日(土) 、 8月2日(土) 、 9月6日(土) 各日14:00~15:00
【会場】 長崎県美術館 企画展示室
【定員】 各回先着20名
【料金) 無料 *要本展観覧券
◆アーティストトーク
【日時】 8月9日(土) 14:00~15:30
【会場】 長崎県美術館 常設展示室 第1室
【講師】 森淳一氏(彫刻家)、青木野枝氏(彫刻家)
【定員】 先着30名
【料金) 無料 *要本展観覧券
◆レクチャー「長崎原爆はいかに表象されたか」
【日時】 8月23日(土) 14:00~15:30
【講師】 森園敦(長崎県美術館 学芸員)
【会場】 長崎県美術館 ホール
【定員】 先着80名
【料金) 無料
◆特別講演会「プラド美術館の保存修復について」
【日時】 9月7日(日) 14:00~15:00
【会場】 長崎県美術館 ホール
【講師】 和田美奈子氏(プラド美術館保存修復課、紙作品修復士)
【定員】 先着100名
【料金) 無料
◆筆談おしゃべり鑑賞会「見る・書く・読む・自分と出会う」
*手話通訳あり
【日時】 8月30日(土) 10:00~12:30、15:00~17:30
【会場】 長崎県美術館 アトリエ、企画展示室
【案内人】 小笠原新也氏(耳の聞こえない鑑賞案内人)
【ゲスト】 前田真里氏(フリーアナウンサー/長崎大学核兵器廃絶研究センター客員研究員)
【対象】 中学生以上(耳の聞こえる・聞こえない・聞こえにくい方どなたでも)
【定員】 各回8名 計16名 *各回最大8名まで、要事前申込
【料金】 無料 *要本展観覧券
◆筆談おしゃべり鑑賞会アフタートーク「見る+書く+読む=自分と出会う?」
*手話通訳あり
【日時】 8月31日(日) 11:00~12:00
【会場】 長崎県美術館 アトリエ
【登壇者】 小笠原新也氏(耳の聞こえない鑑賞案内人)
前田真里氏(フリーアナウンサー/長崎大学核兵器廃絶研究センター客員研究員)
【対象】 中学生以上(耳の聞こえる・聞こえない・聞こえにくい方どなたでも)
【定員】 先着40名 *当日受付
【料金】 無料
【開館時間】 10:00~20:00 *最終入場は19:30
【休館日】 7月28日(月)、8月25日(月)
【観覧料】 一般1,500(1,300)円、大学生・70歳以上1,300(1,100)円、高校生以下無料
*( )内は前売りおよび15名以上の団体料金
*前売券の販売は7月18日(金)まで
*障害者手帳等の提示者及び介護者1名は5割減額。詳しくは長崎県美術館公式Webサイトをご覧ください。
*会期中本展観覧券でコレクション展にも入場できます。
問合せ先:長崎県美術館 TEL 095-833-2110
詳細は・・長崎県美術館Webサイトへ
Googleマップ
*料金、時間、休館日等は、変更の場合があります。必ず確認の上、お出かけください。
*各地のお祭りには、現代に引き継がれている伝統的な神事や儀式として執り行われているものが数多くあります。現地の係員の指示に従って、マナーを守って見学してください。
*複写・転写を禁じます。